「一人ぼっちの練習」を力に変えた。演奏仲間がいない不安を自信に変えるまで
一人での練習に感じていた、漠然とした不安
楽器を演奏する時間というのは、多くの人にとって、自分自身と向き合う大切なひとときではないでしょうか。しかし、特に社会人になってから演奏を再開したり、新しい楽器に挑戦したりすると、学生時代のように気軽に集まれる仲間がいないという状況に直面することがあります。私もまさにそうでした。一人で黙々と部屋で練習する日々。周りには楽しそうにセッションをしているグループや、音楽仲間との活動をSNSにアップしている人がたくさんいるように見えました。
「これで本当に上達しているのだろうか」「自分の演奏は他の人と比べてどうなんだろう」
そんな疑問が頭をよぎるたび、漠然とした不安が募っていきました。「一人ぼっちの練習」が、ときに孤独で心細いものに感じられたのです。練習しているのに満たされない感覚、そして「自分には演奏仲間がいない」という事実が、いつしか小さなコンプレックスのようになっていました。
孤独な時間から生まれた、新たな視点
この孤独感をどうにかしたい、という気持ちは常にありました。しかし、なかなか演奏仲間を見つけるのは容易ではありません。社会人サークルを探してみたりもしましたが、時間やレベルが合わなかったり、人間関係に馴染めるか不安だったり、なかなか一歩を踏み出せずにいました。
そんな中で、私は「演奏仲間がいないこと」自体をどうにかするのではなく、「一人で練習する時間」に対する自分の考え方を変えてみよう、と思うようになったのです。
まず、私は一人で練習するメリットに目を向けることにしました。
- 自分のペースで深く取り組める: 他の人のペースに合わせる必要がないため、苦手な箇所に納得がいくまでじっくり時間をかけられます。誰かの目を気にすることなく、自分が本当に必要だと感じる練習に集中できます。
- 客観的に自分を見つめ直せる: スマートフォンなどで自分の演奏を録音・録画してみるようになりました。最初は聞くに堪えないと感じることもありましたが、繰り返し聞くことで、自分では気づけなかった癖や改善点を発見できるようになったのです。これは、一人でなければ集中してできない作業でした。
- 新しい挑戦がしやすい: 誰かに合わせる必要がないため、普段はやらないような難しい課題曲に挑戦したり、理論的な勉強に時間を使ったりと、自分の関心のある方向に自由に学ぶことができます。
孤独を「集中」に変えるための具体的な工夫
これらのメリットを意識しつつ、孤独感を紛らわせ、練習の質を高めるために、いくつかの具体的な工夫を取り入れました。
- 練習内容の「見える化」: その日に何に取り組むか、どのくらい時間をかけるかなどを簡単なリストやメモで可視化しました。達成感が得られやすくなり、練習のモチベーション維持につながりました。
- 小さな目標設定: 曲を完成させる、という大きな目標だけでなく、「今日の練習ではこのフレーズを綺麗に弾けるようにする」「スケール練習を5分集中して行う」といった、短時間で達成可能な小さな目標を毎日設定しました。一つクリアするたびに、小さな自信を積み重ねることができました。
- オンラインリソースの活用: 教則動画やオンラインレッスン、音楽理論に関するウェブサイトなどを積極的に利用しました。画面越しながらも「教えてもらっている」「学んでいる」という感覚が、一人きりではないと感じさせてくれました。また、同じ課題に取り組む人のコメントを読んだりすることで、ゆるやかな繋がりを感じることもありました。
- 定期的な「発表」の場を作る: 誰かに聞かせるわけではなくても、録音したものを「今日の成果」として保存したり、SNSの非公開アカウントにアップしたりしました。これは、自分自身に対する小さな発表会のようなもので、練習のモチベーションを保つ上で効果的でした。
孤独な時間から得られた、ゆるぎない自信
これらの工夫を続ける中で、私の「一人ぼっちの練習」に対する考え方は大きく変わっていきました。孤独で不安な時間ではなく、自分自身と深く向き合い、着実に成長していくための貴重な時間だと捉えられるようになったのです。
驚くほど、演奏に対する自信もついてきました。誰かと比べてどうか、ではなく、以前の自分と比べてどれだけできるようになったか、という明確な物差しができたからです。録音を聞き返すと、過去の自分では弾けなかったフレーズが滑らかになっていたり、音色が変わっていたりすることが分かり、それが大きな励みになりました。
もちろん、今でも音楽仲間と一緒に演奏できたら楽しいだろうな、と思う気持ちはあります。ですが、「仲間がいないからダメだ」と落ち込むことはなくなりました。一人でもこれだけ深く音楽と向き合い、成長できるという経験は、私にとって大きな財産となりました。
演奏仲間がいる方もいない方も、それぞれに悩みやコンプレックスがあることと思います。「#演奏で変わった私」の物語が、一人でも多くの方にとって、演奏を続ける力や、自分自身と向き合う勇気につながれば幸いです。孤独な時間も、きっとあなたの演奏と人生を豊かにする力になるはずです。