#演奏で変わった私

レパートリーを広げる意味が分からなかった私が、新しい音楽との出会いで演奏が変わった話

Tags: レパートリー, 新しい音楽, 挑戦, 成長, 演奏

いつも同じ曲ばかり弾いていませんか?

楽器を演奏されている皆さんの中には、「なぜかいつも似たような曲ばかり弾いてしまう」「好きなジャンル以外の曲には、なかなか手を出す気になれない」と感じている方がいらっしゃるかもしれません。私もかつて、まさにそうでした。

得意な曲、好きな曲というのは、安心して演奏できますし、何より楽しいものです。しかし、いつからかそれがマンネリに繋がり、自分の演奏がどこか停滞しているような感覚を抱くようになったのです。新しい曲に挑戦しようと思っても、「難しそう」「自分には合わないかもしれない」「どうせ弾きこなせないだろう」といった不安が先に立ち、結局いつものレパートリーに戻ってしまう。そんなことを繰り返していました。

新しい音楽に挑戦する「壁」

なぜ新しい音楽への挑戦に及び腰になっていたのか、今振り返るといくつかの理由があったように思います。

一つは、失敗への恐れです。知らない曲や慣れないジャンルは、当然最初はスムーズに弾けません。間違いも多くなります。その「弾けない自分」を見るのが嫌だったのです。既に弾ける曲を完璧にこなす方が、手っ取り早く達成感を得られると感じていました。

次に、目的意識の曖昧さです。レパートリーを広げることが、自分の演奏にとって具体的にどのようなメリットがあるのか、よく理解していませんでした。「色々な曲が弾ける方がかっこいい」といった漠然とした憧れはありましたが、それが自分の成長にどう繋がるのかが見えていなかったのです。

また、時間的な制約も大きな要因でした。仕事と並行して演奏に取り組んでいると、練習時間は限られます。その貴重な時間を、慣れない新しい曲に使うのはもったいないと感じてしまい、既に弾ける曲の精度を上げる方を選んでいました。

小さなきっかけが視野を広げる

そんな私が変わり始めたのは、本当に些細なきっかけからでした。ある時、信頼できる音楽仲間に勧められた、普段全く聴かないジャンルのアルバムを試しに聴いてみたのです。最初は戸惑いましたが、何度か聴くうちに、その独特のリズムやコード進行、音色に惹きつけられるようになりました。

そして、その中の一曲を「少しだけ弾いてみようかな」と、軽い気持ちで楽譜を手にとってみたのです。案の定、最初は指が思うように動きませんし、音楽のノリも掴めませんでした。しかし、不思議と「嫌だ」という気持ちにはなりませんでした。それはおそらく、「これを弾けるようにならなければ」という義務感ではなく、「この面白い音楽を自分でも奏でてみたい」という好奇心が勝っていたからだと思います。

「弾けるようになる」だけではない価値

その曲に少しずつ取り組む中で、多くの発見がありました。それまで意識していなかったリズムの取り方、コードの響き、表現の幅など、普段のレパートリーでは得られない学びがあったのです。最初は拙い演奏でしたが、新しい音楽の要素を取り入れようと試行錯誤する過程そのものが、非常に新鮮で刺激的でした。

この経験から、「レパートリーを広げる」ということは、単に弾ける曲の数を増やすことではないのだと気づきました。それは、自分の中の音楽的な引き出しを増やし、表現の可能性を広げることであり、様々な音楽に触れることで、自分の得意なジャンルや曲に対する理解も深まるということなのだと理解できたのです。

新しいジャンルへの挑戦は、最初はハードルが高いかもしれません。しかし、何も「このジャンルをマスターするぞ!」と意気込む必要はありません。

といった、本当に小さな一歩から始めることができます。

演奏が私にもたらした変化

新しい音楽との出会いを通じて、私の演奏は確実に変わりました。以前よりも音楽を「聴く」ことが楽しくなり、楽譜から読み取れる情報だけでなく、その背景にある文化や歴史にも興味を持つようになりました。

そして、演奏に対するマインドも変化しました。「完璧に弾かなければ」という強迫観念が薄れ、「この音楽から何を学び取れるだろうか」「どうすれば、この音楽の持つ魅力を表現できるだろうか」という探求心を持って練習に取り組めるようになりました。

それは、演奏そのものを深く味わうことに繋がり、以前よりも練習時間が密度の濃いものになったと感じています。何より、新しい音楽に挑戦し、少しずつ形になっていく過程で得られる達成感は、私の自信を大きく高めてくれました。

もし今、「いつも同じ曲ばかり弾いてしまう」「新しい音楽に挑戦する勇気がない」と感じている方がいらっしゃいましたら、ほんの少しだけ、普段と違う扉を開けてみることをお勧めします。その先には、きっとあなたの演奏を、そしてあなた自身を、より豊かにしてくれる新しい世界が広がっているはずです。