#演奏で変わった私

「『みんなと違う』音楽が好きだった私が、個性を自信に変えた話」

Tags: 演奏, コンプレックス, 個性, 自信, 自己肯定感, 音楽の好み

周りと違う「好き」に感じていた、小さなコンプレックス

楽器を演奏されている皆さんは、どんな音楽が好きでしょうか。クラシック、ジャズ、ロック、ポップス、アニソン…。様々なジャンルがありますし、特定のアーティストや特定の年代の音楽に深く傾倒している方もいらっしゃるかもしれません。

私は、少しマイナーなジャンルの音楽が好きでした。周りの友人が有名なクラシックの曲や流行りのポップスを演奏している中で、私が興味を持っていたのは、あまり知られていない海外のバンドの楽曲や、ニッチなフュージョンミュージックなどでした。

演奏仲間との話で、「〇〇さんの曲、弾いてみたいんだ」と言われても、私はピンとこない。逆に、私が「この曲知ってる?」と話しても、「ああ、なんかマニアックだね」と言われてしまうことが少なくありませんでした。

「みんなが知っている曲の方が、一緒に楽しめるのに」 「評価されるのは、分かりやすい有名な曲なんじゃないか」 「自分のやっていることは、誰からも理解されないのではないか」

そんな思いが募るにつれて、自分の「好き」は、演奏の世界においては少し恥ずかしいものなのではないか、という小さなコンプレックスを抱くようになりました。練習していても、「この曲を弾けるようになっても、誰かに聴かせられる機会なんてあるのかな」と感じてしまい、モチベーションが低下することもありました。

「みんなと違う」を個性として捉え直すきっかけ

そんな風に悩んでいた私に、考え方の変化をもたらすいくつかの出来事がありました。

一つは、ある日偶然、同じようなマイナーなジャンルを深く愛好し、それを演奏で表現している人の存在を知ったことです。その方は、決して有名なプレイヤーではありませんでしたが、自分の「好き」を心底楽しんで演奏されている様子が伝わってきました。その演奏を聴いていると、ジャンルの知名度に関わらず、「好き」から生まれるエネルギーが、聴く人の心を動かすのだということを強く感じたのです。

もう一つは、あるインタビュー記事で読んだ、私が尊敬するプロの演奏家の言葉でした。その方は、自身の音楽性について語る中で、「自分にしか出せない音や表現は、自分の『好き』の積み重ねの中から生まれてくる」という趣旨のことを述べられていました。「みんなと同じ」であろうとするのではなく、「自分は何が好きか」を深く掘り下げることが、唯一無二の個性につながるのだと。

これらの出来事を通して、私は「みんなと違う」ということをネガティブに捉える必要はないのかもしれない、むしろそれは「個性」として、自分の演奏を特別なものにしてくれる可能性があるのではないか、と考えるようになりました。

自分の「好き」を深く探求する旅

考え方が変わってから、私は自分の「好き」を否定するのではなく、積極的に掘り下げるようになりました。

まずは、自分がなぜそのジャンルやアーティストが好きなのか、具体的にどんな音やリズム、フレーズに惹かれるのかを、言語化してみることから始めました。そして、その要素を自分の演奏に取り入れるにはどうすれば良いかを考えました。

例えば、あるアーティストの独特の「間」が好きならば、楽譜通りに弾くだけでなく、その「間」をどのように再現できるか試行錯誤しました。そのジャンル特有のリズムパターンがあれば、基礎練習に取り入れて体に馴染ませる努力をしました。

ニッチな情報源を探したり、関連する音楽理論を調べたりすることも、以前は億劫でしたが、自分の「好き」を深めるためだと思うと楽しく取り組めました。幸いなことに、最近ではインターネットを通じて、ニッチな情報や、同じ「好き」を共有する人々と繋がる機会も増えています。オンラインコミュニティに参加してみたり、SNSで自分の好きな曲について発信してみたりする中で、少数派であっても共感してくれる人がいることを知り、孤独感が和らぎました。

個性を自信に変えた演奏体験

自分の「好き」を追求していく過程は、決して簡単な道のりではありませんでした。一般的な教本がない、手本となる演奏が少ないなど、独学ならではの壁にぶつかることも多々ありました。

しかし、そうした困難を乗り越え、自分が本当に好きな音楽を、自分なりの解釈で演奏できるようになった時、以前にはなかった深い満足感を得られるようになりました。

周りの人から「珍しい曲だけど、すごく〇〇さんらしいね」とか、「聴いたことないけど、なぜか惹きつけられる」といった言葉をかけてもらえることも増えました。かつてコンプレックスだった「みんなと違う」が、「個性」として受け入れられた瞬間でした。

自分の「好き」を大切にし、それを演奏で表現しようと努めたことで、技術的な面でも新たな扉が開かれました。特定のジャンルを深く掘り下げたことで、そのジャンルならではの技術や表現方法が身につき、それが他の音楽を演奏する際にも応用できるようになりました。何よりも、自分の内側にある「好き」という強い原動力が、演奏を続ける上で最大のモチベーションとなったのです。

あなたの「好き」も、きっと誰かの心に響く

もしあなたが、周りの演奏者と違う音楽の好みに、少しでもコンプレックスを感じているとしたら。それは決してネガティブなことではありません。むしろ、あなたの「好き」こそが、あなただけの個性であり、演奏を豊かにしてくれるかけがえのない宝物になり得ます。

もちろん、基礎を学ぶことや、様々な音楽に触れることは非常に大切です。しかし、最終的にあなたの演奏をあなたらしく輝かせるのは、あなたの内側にある、偽りのない「好き」の気持ちだと私は信じています。

誰かの評価や流行にとらわれず、自分の心の声に耳を傾けてみてください。あなたが本当に惹かれる音、リズム、メロディーは何でしょうか。その「好き」を大切に育み、演奏で表現することを恐れないでください。あなたの個性は、きっと誰かの心に響く、特別な音楽を生み出す力となるはずです。演奏を通して、あなたらしい輝きを見つけていくことを応援しています。