独学で壁にぶつかった私が、新しい学び方で可能性を広げた話
独学で感じた「このままではダメかもしれない」という不安
楽器演奏を始めたきっかけは人それぞれかと思います。学生時代の部活動、スクールに通う、そして私のように「独学」で始める方もいらっしゃるのではないでしょうか。インターネットや書籍で情報は手に入りやすく、自分のペースで好きな時間に練習できる独学は、特に忙しい社会人にとって始めやすい方法の一つだと感じています。
私も、数年前に独学で演奏を始めました。最初はコードを覚えたり、簡単なフレーズを弾いたりするだけでも楽しく、みるみる上達しているような感覚がありました。インターネットで見つけた解説記事やYouTubeの動画を参考に、見よう見まねで練習を重ねる日々でした。
しかし、ある程度の段階まで来たとき、明確な「壁」にぶつかったのです。
楽譜通りには弾けるものの、どこか一本調子で、音楽的な表現が乏しいと感じるようになりました。自分で演奏を録音して聴いてみても、「これで合っているのだろうか」「何が足りないのだろうか」と、疑問ばかりが浮かんできます。ネット上の情報は断片的で、自分の抱える具体的な課題にどう対処すれば良いのか分かりません。
特に辛かったのは、自分の演奏の欠点が自分では分からない、という点でした。誰かに聴いてもらう機会もなく、客観的な視点が得られない環境で、ただ漠然とした不安を抱えながら練習を続けるのは、精神的に非常に消耗しました。周りに同じ楽器を演奏する知人もおらず、「一人ぼっちで暗闇の中を手探りしている」ような感覚に陥り、次第に「このまま独学を続けていても、きっと大きな変化はないだろう」という諦めにも似た感情が芽生えていったのです。
「学び方を変える」という発想との出会い
独学の限界を感じていた私は、ある時、SNSで演奏仲間を探すコミュニティの存在を知りました。そこで、自分と同じように独学で悩んでいる方が多くいること、そしてその中にはオンラインレッスンを受け始めたり、ワークショップに参加したりして、壁を乗り越えたという声があることを知りました。
それまで、「演奏を学ぶ=教室に通う」というイメージしかなかった私にとって、「オンラインレッスン」や「短期のワークショップ」、「コミュニティでの交流」といった多様な「学び方」の選択肢があるという事実は、目から鱗でした。
もちろん、大人になってから改めて誰かに習うことへの抵抗や、「今更習っても遅いのでは?」という不安も正直ありました。しかし、「このまま一人で悩んでいても状況は変わらない」という思いが勝り、思い切ってオンラインレッスンを申し込んでみることにしたのです。
新しい学び方がもたらした具体的な変化
私が選んだのは、1回あたりの時間は短いものの、定期的に受講できるオンラインレッスンでした。初めてプロの演奏家の方に自分の演奏を聴いていただいた時は、とても緊張しました。しかし、先生は私の演奏の良い点を見つけて褒めてくださり、その上で、私が漠然と抱えていた不安や疑問に対して、驚くほど具体的かつ的確なアドバイスをくださいました。
例えば、私が「表現が乏しい」と感じていた点について、先生は「フレーズの終わり方を少し意識するだけで、歌い方が変わりますよ」と、具体的な演奏方法や考え方を教えてくださいました。また、自分で気づいていなかった演奏時の体の使い方についても指摘を受け、そこを改善するための簡単な練習方法を教えていただくこともできました。
たった数回のレッスンでしたが、それまで一人でどれだけ考えても分からなかったことが、次々とクリアになっていく感覚を味わいました。先生からの客観的な視点と、私のレベルや悩みに合わせた具体的なアドバイスは、まさに私が求めていたものでした。
また、SNSのコミュニティで他の演奏者と交流することで、「自分だけが悩んでいるわけではない」という安心感を得られました。他の人の練習方法や考え方を知ることは、私自身の練習に対するモチベーション維持にもつながりました。
独学の経験を無駄にしない、自分らしい成長の道
新しい学び方を取り入れたことで、私の演奏は少しずつですが、確実に変化し始めました。以前のような手探りの不安はなくなり、自分が今、何のために、どのような練習をするべきかが明確になりました。
もちろん、今でも練習時間の確保に苦労したり、上手くいかずに落ち込んだりすることはあります。しかし、独学で培った「自分で調べて考える力」と、新しい学び方で得た「他者からの視点と具体的な指導」が組み合わさることで、以前よりもずっと効率的かつ前向きに演奏と向き合えるようになったと感じています。
独学で壁にぶつかり、一度は諦めかけた演奏でしたが、「学び方を変える」という選択をしたことで、再び演奏の楽しさを取り戻し、さらにその可能性を広げることができました。
もし今、あなたが独学での伸び悩みに直面し、一人で悩んでいるのであれば、少しだけ視点を変えてみることをお勧めしたいと思います。それは必ずしも教室に通うことだけを意味するのではなく、オンラインでアドバイスをもらったり、同じ趣味を持つコミュニティに参加してみたりと、自分に合った形で他者と繋がってみる、ということです。
演奏を通じて得られる喜びや成長は、決して独学という方法だけに限定されるものではありません。様々な学び方を取り入れながら、自分らしいペースで、演奏の道を切り拓いていくことができるのだと、私の経験が誰かの希望になれば幸いです。