#演奏で変わった私

「短い時間では無理」と思っていた私が、練習の「質」を変えて上達を実感するまで

Tags: 練習法, 効率化, 時間管理, 上達, モチベーション

「時間がない」という言い訳とコンプレックス

仕事をしながら楽器演奏を続けていると、しばしば時間に追われる日々が訪れます。「今週は全然練習できなかったな」「他の人はもっと時間をかけているんだろうな」と感じるたび、焦りや引け目を感じていました。特に、SNSなどで長時間練習している人や、学生時代のようにまとまった時間が取れる人を目の当たりにすると、「短い時間しか確保できない自分には、どうせこれ以上の成長は無理だ」と、半ば諦めにも似た気持ちになっていたのです。

「短い時間で練習しても、意味がないのではないか?」という疑問が常に頭の中にありました。せっかく楽器を出しても、すぐに集中力が切れたり、何をしたら良いのか分からず漫然と音を出しているだけで時間が過ぎてしまったり。練習時間そのものが確保できない上に、その短い時間でさえ質が伴わない。この悪循環が、「自分には才能がないのかもしれない」というコンプレックスをさらに深めていきました。

量より質へ。視点を変えるきっかけ

そんな停滞期を抜け出すきっかけとなったのは、あるオンラインセミナーでした。その中で語られていたのは、「練習時間はあくまで結果であり、重要なのはその時間で何を得られたか」という考え方でした。長時間練習すること自体が目的ではなく、短時間でも良いから「何を、どのように練習するか」を明確にすることの重要性が強調されていました。

この話を聞いて、私は自分の練習がまさに「時間ありき」になっていたことに気づきました。練習時間を確保することにばかり気を取られ、その中身については深く考えていなかったのです。たとえ1時間練習できたとしても、目的意識がなく、ただ楽譜を追っているだけでは、それは濃密な15分には劣るのかもしれない。そう考えるようになってから、「短い時間でも、質を高めれば変われるかもしれない」という希望が見えてきました。

限られた時間で「質」を高めるための具体的なアプローチ

「量より質」という考え方にシフトしてからは、練習に対するアプローチを大きく変えました。以下は、私が実際に行った具体的な工夫です。

1. 超短期的な目標設定

これまでは漠然と「この曲を弾けるようにする」といった長期目標だけでしたが、短い練習時間では成果が見えにくく、モチベーション維持が困難でした。そこで、「今日の練習で、この3小節のリズム課題を解決する」「このパッセージのテンポを〇まで上げる」「特定の箇所を3回ノーミスで弾く」など、1回の練習で確実に達成できる超短期的な目標を設定するようになりました。小さな成功体験を積み重ねることで、短い練習でも「できた!」という実感を得られ、次の練習への意欲につながりました。

2. 集中力を最大限に高める工夫

練習時間中は、他のことを一切しないと決めました。スマートフォンは手の届かない場所に置き、タイマーを使って時間を区切りました。たとえば「最初の15分は基礎練習に集中」「次の20分で特定箇所の反復練習」のように、時間を決めてメニューをこなすことで、ダラダラとした練習を防ぎ、限られた時間の中で最大限の集中力を発揮できるようになりました。

3. 練習内容の厳選と工夫

漫然と曲を頭から最後まで弾くのではなく、特に苦手な箇所や課題に絞って集中的に取り組みました。メトロノームを積極的に活用し、正確なリズムやテンポ感を意識しました。また、自分の演奏を録音して客観的に聴く習慣を取り入れました(最初は抵抗がありましたが)。短い時間でも客観的な視点を持つことで、改善すべき点が明確になり、次に何に取り組むべきかが分かりやすくなりました。

内面的な変化と演奏への好影響

これらの工夫を続けるうちに、私の練習に対する意識と、それまで抱えていたコンプレックスは少しずつ変化していきました。

まず、「時間がない」ことを言い訳にしなくなった自分がいました。むしろ、「この短い時間で、どこまでできるだろう?」と考えるようになり、限られた時間の中で最大限の成果を出すことにやりがいを感じるようになりました。練習の成果が小さな目標達成として目に見えるようになると、「自分は成長できているんだ」という感覚が得られ、自己肯定感が高まりました。

また、練習の「質」に意識を向けることで、単に音を出すだけでなく、音色や表現、リズムの正確さといった細部により気を配るようになりました。その結果、演奏全体に深みが増し、以前よりも自分の音を好きになれるようになりました。他人の演奏と比べて落ち込むことも減り、自分自身の過去の演奏と現在の演奏を比較して、成長を実感することに喜びを感じるようになったのです。

短い時間でも、質の高い練習はあなたを変える

もちろん、長い時間をかけてじっくり取り組むことも大切です。しかし、時間が限られているからといって上達できないわけではありません。重要なのは、与えられた時間の中で、いかに集中し、目的意識を持って取り組むか、ということです。

かつて「短い時間では無理」と諦めかけていた私ですが、「練習の質」に目を向け、具体的な工夫を重ねたことで、演奏スキルだけでなく、時間に対する考え方や自己肯定感も大きく変わりました。もし今、あなたが練習時間の確保に悩んでいたり、短い時間での練習に効果を感じられずにコンプレックスを抱いているなら、ぜひ「量」ではなく「質」に焦点を当ててみてください。きっと、限られた時間の中でも、着実に前進できるはずです。そして、その小さな一歩一歩が、あなたの演奏とあなた自身を良い方向へ変えていくと信じています。